最終話「24K GOLD」-後編-

4th Nov 2020 by

 

 

 

金子淳二郎。

 

 

2013年の夏。

 

初めてJunとニューヨークに行った。

正確に言えば連れていってもらった。と言ったほうが正しい。

交通費から宿泊費も出してくれ、

さらには現地での仕事までくれた。

この年から今年に至る迄、

彼がアメリカに行く度にほぼ毎回のように同行し、

ニューヨーク以外にも、

ロス、ベガス、香港、マカオ、台湾、タイ…

本当一体何十回彼と旅をしてきたか分からない。

 

最終回はブルックリンのアパートの一室から始まった、

Junがニューヨークで出店するまでの軌跡を記したいと思います。

 

 

 

 

1166 Manhattan Ave Suite 205 , Brooklyn,New York  11222

 

ブルックリンとクイーンズの丁度間、

レンガ調の4階建てのオフィスアパートメントに、

旧PRIVILEGEオフィスがあった。

従業員はユダヤ系アメリカ人のTeddy1人。

何回か前のReakwonの回で登場した彼だ。

この時はアメリカではオンラインのみでの展開だった。

天井高めのワンボックスオフィスに、

デスクにパソコンが一台とプリンターが一台、

それ以外は在庫とサンプルのみ。

 

ここが全ての始まりだった。

 

初めてJunと行ったニューヨークは大所帯での旅。

DJ IZO君が同じタイミングでDMCのアメリカ大会の特別ゲストで呼ばれていて、

彼のマネージャーのホッチさんもいたし、今はもういないLafayetteの武智君、

PRIVILEGE NY副社長のBONEさん、PRIVILEGE Sendaiの社長のDさん、

Junの地元の先輩のHagiさん、LAからきていた写真家のDanny Steezy、

Junと私を含めて9名でのニューヨーク旅だった。

旅の目的は、今はもうなくなってしまったが、

マンハッタンのローワーイーストにあった人気アパレルショップ、

“aNYthing”でのPOPUPショップだった。

 

私がニューヨークで学生の頃、

aNYthingには学校帰り頻繁に行っていて、

ローカルの中でもイケてる店として名が通っいた言わば憧れの店。

そんな店でPOPUPをする事自体私にとっては衝撃的だったが、

旅の一行の表情に緊張感はなく私は当時若干の温度差を感じていた。

 

JunやBONEさんの表情には緊張のきの字も見えなかったから。

 

POPUPが始まりLafayetteやPRIVILEGEのアイテムが陳列された。

来店する客達の面子も衝撃的だったのを覚えている。

 

「KIKIさん、Clarkが今から来るのでIZOとツーショット写真撮ってもらえますか?」

 

この頃はまだJunとの距離は遠く、

彼が私に直接話しかけてくる事も少なかった。

いつも低姿勢、敬語で私に話かけてくれていた。

 

「Clark…?ってまさかDJ Clark Kentですかw?」

 

「そうです、そうです。彼がPRIVILEGEの名付け親なんですよ。」

 

「マジっすかw?!了解です。準備しておきます。」

 

マジかよ。

ハンパじゃないとこ来ちゃったんじゃないか…

DJ Clark KentはJay-Zを発掘したレジェンドプロデューサー。

そんな人と何でこの人は繋がっているんだ。

自分は何年もこの街に住んでいたのにそんな出会いは一度もなかった。

 

一体この人は何者なんだ。

これが私の彼に対する印象というか当時の心の声だった。

 

少しすると店の前に厳つい高級車が停まる。

2メートル近い大男が子供を連れて車を降りてきた。

 

これがClark Kent…?

 

名前や楽曲は知っていたが顔は見たことがなく、

半信半疑の眼差しで大男家族を目で追った。

大男は店のまでJunとハグをして、

何やら世間話をしている様子。

そして副社長のBONEさんを見つけるなり、

 

「Yoooooooo!!!TBONEじゃないか!久しぶりだな!」

 

「おーーークラークーー。元気?」

 

この大男がClark Kentに間違いない。

BONEさんと話しているところに私も挨拶に向かった。

 

「初めまして、フォトグラファーのKIKIって言います。この後IZO君と写真撮らせてください。」

 

「初めまして、Clark Kentだ。写真だな。了解、後で声かけてくれ。」

 

この時が初めてClarkと握手を交わした時。

突然訪れた雲の上の存在との交流に、

私はもはやパニック寸前だった。

 

ただそんな緊張を速攻で吹き飛ばしてくれた事が一つあった。

 

それはBONEさんがClarkに日本語で話かけていた事だ。

当然英語で話すClarkに、戸惑いも無くそのまま日本語で返すBONEさん。

Clarkは日本語は話せないはずだけど…

それでも弾むClarkとBONEさんの会話。

そんな事ありえるのか。

もはやレジェンドとの出会いを遥かに超えるパニックに、

不思議だけど新しい感覚が宿っていった。

 

Junといい、BONEさんといい、この人達は何者なんだろう。

 

来店したお客さんを丁寧に接客するJunと、

店の中にはほぼいないBONEさん。

客とのコミュニケーションの中で、

アメリカ人の考え方や傾向を分析していくJunに対し、

街の流れや変化を冷静に観察するBONEさん。

今思えばこの絶妙なバランスが物事を進めていったのかもしれない。

 

それから何日間かPOPUPは続き、数日後に無事終了した。

片付けを終わらせてホテルに帰る一行の車内、

JunとBONEさんの会話が耳に残っている。

 

「ネコさん(Jun)、今回のPOPUPで思ったけどローワーイーストは微妙かもな。」

 

「やっぱそうかな?確かに前みたいな活気はないかもね。」

 

「出店はソーホーの方がいいんじゃないか?」

 

「でもソーホーは家賃が別格だよ。T-BONEお金出してよw」

 

「え?俺?仕方ねーかー。私の出番ですかね。」

 

「本当にw?頼むよ副社長。」

 

「まぁ考えておきますよ。」

 

この頃はJunとBONEさんの関係性もわからなかったが、

どうやらニューヨークでの出店計画にあたり、

試験的にPOPUPをやってみたというのが今回の狙いだったらしい。

アイテムに対しての客の反応、そのエリアの街の流れ、

関わるローカル達から聞く今のリアルなニューヨーク。

彼らが見ていたビジョンは、

POPUPをニューヨークの有名店でやるなんてことより、

もっともっと先にあった。

 

POPUPも終わり残り数日。

一行も団体行動ではなくなり、個人行動に変わる。

私はJunとBONEさんと行動を共にすることにした。

恐らくあの車内での会話から彼らの動きに惹かれていたのだ。

買い付けがてらに街を歩く二人だったが、

私には買い付けはオマケのように見えていた。

Junは空き物件を見つける度に募集要項の写真を撮り、

BONEさんは目に入る今のニューヨークを切り取っていく。

 

「ネコさん、さっきのクリーニング屋のロゴよかったね。あれサンプリングしたら面白いんじゃない?さっき飲んだ水のパッケージもよかったなー。」

 

「確かにいいね。T-BONEいいのあったら写真撮っておいてよ。」

 

「えーーーめんどくせーなー。」

 

「いいじゃんwパパッと撮るだけなんだから。」

 

「まぁ気が向いたら。」

 

私は今でも変わらないこの二人のやりとりが大好きだ。

全く違うタイプの二人が絶妙なバランスを保っている感じ。

 

この時私は、BONEさんに何となく聞いたことがある。

 

「BONEさんはいつもアイディアを街を歩いて考えるんですか?」

 

「アイディア考えるっていうか、俺らがやってるのはストリートブランドだからなー、ストリートに落ちてるアイディアを拾ってるだけですよ。すでに売れてるものパクっても意味ねーだろー。」

 

かなり破天荒な副社長のBONEさん。

彼に対して色々な見方をする人もいるだろうが、

私はある意味彼は天才だと思っている。

何も考えていないフリをして一番考えている。

“脳ある鷹は爪を隠す”という言葉が、

うまくハマりそうでハマらない人というかw

表現するのは難しいけど彼にはなぜか人を惹きつける魅力がある。

少なくとも私が彼のカリスマ性に惹かれたのは事実だ。

笑いのセンスも抜群です。

 

初めて同行させてもらった彼らとのニューヨークは、

私にとってはこれからを左右する旅となった。

この頃はまだ双葉がで始めた頃だろうか。

JunとBONEさん。

この旅で彼らの魅力に惹かれた。

そしてここから4年というという月日を経て、

ローワーイーストで花が咲く。

 

 

 

 

それから半年後。

 

Lafayetteの2014年秋冬コレクションの展示会でのこと。

当時のメインデザイナーの清吾さんからルックブック撮影の依頼が飛んできた。

 

「今回僕はKIKI君に撮って欲しいんですよ。どうですか?」

 

「やりたいです!絶対やりたいです!」

 

「じゃあ金子のほうに言っておきますね。」

 

「よろしくお願いします!」

 

私にとっては今までで一番のビッグジョブだった。

展示会の帰りに代々木公園を散歩しながら、

嬉しくて地元の友達に電話したのを覚えている。

ただ漏れの興奮に脳内でセロトニンが爆発した。

あの快感こそ今でも求め続けているものなのかも。

 

その後Junから正式にオファーをもらい、

展示会から数週間後、

彼らと2度目のニューヨークへ向かった。

Junと清吾さん、そして自分の3人。

モデルの選定も任され学生時代の友達にコンタクトをとり、

事前にモデルもブッキング済みだった。

ブランド関係なく自身初のルックブックの撮影。

どうやって進行していくのかもわかっていなかったが、

なんだかんだで撮影当日を迎えてしまった。

 

時間になりモデルが続々と集まってくる。

そしてすぐさま撮影が始まった。

友達の紹介とはいえモデル全員初対面。

私は撮影とモデルのケアーで頭がいっぱいで、

撮影が始まってからは無我夢中で撮り続けた。

 

緊張とパニックの狭間、

汗が止まらなかった。

 

そんな中Junはモデルと楽しそうに会話をしながら服を着せていく。

サンプルのサイズとモデルの体型、

発売時期とトップスとパンツのコーディネーション、

全て踏まえた上でその場で彼が考えて着せていく。

ある程度頭では考えているのだろうが、

その場でモデルをさばいていく様には生感があった。

楽譜のあるクラッシック音楽ではなく、

その場の空気に情熱を映すジャズのよう。

即興を自分のペースで捌く彼の姿に、

自分との分厚い経験値の違いを感じた瞬間でもあった。

ほぼパニック同然の私の背後で、

Junは先頭に立って背中を見せてくれた。

 

彼はいつもそうだった。

 

まずどんなことも自分がやって見せていた。

買い付けの時の下っ端仕事も、

事務所の掃除も必ずまず自分がやる。

言葉では何も言わずただ行動で見せてくれる。

だから人がついてくるのだろう。

 

私はニューヨークでのLafayetteの撮影を通して、

ぶっつけ本番に対しての免疫はかなりできたと思っている。

そしてそれは特にこの街では不可欠な免疫だと今は思う。

チャンスも転機も全て同じだけど、

いつくるかわからないビックウェーブは待ってはくれないし、

準備している暇なんてない。

今できなきゃ次がいつくるかなんてわかりもしない。

ニューヨークでは躊躇していたらもう終わり。

機材も体調も言葉も理由にならない。

結果を出せるか出せないか。

それ以外は何もないし、できない奴は相手にされない。

 

「お疲れ様でした!」

 

Junの声が皆の拍手と共にスタジオに響き渡る。

夢中過ぎて一瞬に感じた初のルック撮影。

非常階段のドアの前、

オートロックのドアを石で止め、

Junと二人でタバコを吸った。

 

「お疲れ様でした。ありがとうございました。」

 

「いやこんなチャンスもらって逆にありがとうございます。」

 

「あのパップってモデルかっこいいねぇ。めちゃくちゃ似合ってた。んーーーやっぱニューヨークに店欲しいな。」

 

「是非やってくださいよ!めちゃくちゃ楽しみです。」

 

「んーいろいろ物件とか見てるんだけど。まずオンラインをもっと売れるようにしてからだよね。どうするかなwまだ出店までは結構かかりそうかなw」

 

路上でタバコを吸いながら話す世間話の中、

この時私は初めてJunの口からニューヨーク店出店への気持ちを聞いた。

 

それから2016年までの2年間で、

マンハッタンで2回ブルックリンで2回POPUPを開催。

私も全てのPOPUPに参加させてもらったのだが、

色々な場所と環境で試験的に行われたPOPUPには、

毎回にJunの狙いがあったように見えた。

そして、この定期的に行ったPOPUPを経て2016年の冬、

ニューヨークでの試験的出店から全米へのチェレンジに変わる。

 

2016年2月。

 

ラスベガスで行われたトレードショー”AGENDA”に出店する。

 

 

 

 

集合場所のロスの某モーテル。

 

最初についたのは仙台組のDさん、MARZさん、自分だった。

 

ニューヨーク組と神奈川組はベガスに向かう2日前に落ち合う予定で、

私は彼らの到着までモーテルのプールサイドで爆睡していた。

今回のクルーは、日本からはJun、Akira君、Dさん、MARZさん、自分。

アメリカからはTeddy、Adreal、Manny。の計8人。

このメンバーでアメリカでの初のトレードショーに臨んだ。

ラスベガスで行われる”AGENDA”は3日間。

全米、世界中からアパレルブランドが集まり、

新しい取引先との契約や、

新作を披露するアメリカでも指折りのトレードショーだ。

そこにJunを筆頭にLafayetteが出店する予定だった。

 

だが伝えられていた到着予定の時刻を過ぎても全く誰も来ない。

神奈川組とニューヨーク組は空港で落ち合って、

一緒にくるという話だったが何かあったのだろうか。

するとニューヨーク組のAdrealとMannyが見えた。

Adrealが手を振っている。

 

「久しぶり!遅かったじゃん。なんかあったの?!あれ?Teddyは?」

 

「マジでやばいぞ!Akiraが税関で引っかかって荷物没収されているんだ。」

 

「マジ?!荷物ってまさかショーに出品するアイテム?」

 

「そうだ!しかも商品サンプルの持ち込みだから何日間か返してもらえないらしい。今JunとTeddyが税関で交渉してる。だけど多分あれは厳しいかもな。もう他の場所に運ばれたみたいだし。」

 

「いやそれはマジでやばい。出店するのにアイテムなかったらギャグだよ。」

 

「祈るしかないな。とりあえずJunもAkiraも入国は終わってるからあとは祈って待つだけだ。」

 

それから日が暮れても彼らは来なかった。

そして夜の23時頃だっただろうか。

プールサイドのパラソルの下でAdrealとチルしていると、

馬鹿でかいボストンバッグを何個も持ったJunとAkira君とTeddyが見えた。

 

「荷物返してもらえたんですか?!」

 

「何とか。ギリギリだったけどどうにかなったwいやぁもう終わったと思いましたw今日荷物運ばれちゃったら3、4日とり返せなかったから。本当ギリギリw」

 

安堵の表情を浮かべるJunと疲れ切った表情のAkira君とTeddy。

全く関係ないがTeddyの疲れは吐き疲れだったらしい。

ベガスについて空港かなんかで食べたブリトーに当たって吐きまくっていたらしい。

さすがTeddyって感じだった。

悪運も味方につけて一行でベガスに向かった。

出発前日に私はTeddyと史上最大の喧嘩をしてしまったがそこは割愛します。

今でもBestBuyの看板が忘れられない。

 

ベガスに着き会場のホテルに圧巻した。

さすがアメリカ最大級のトレードショーだ。

その規模は凄まじくテンションが自然と上がっていった。

出店ブースに案内され、準備を始める。

私はその様子を一部始終映像に収めた。

 

翌朝トレードショー1日目。

駐車場からカジノを通り抜けると、

とんでもない量のブースと来場者に喰らう。

世界各国から色々な種の人間が集まり賑わっていた。

Lafayetteのブースにも人集りができていた。

その様子を撮っていて思ったことだけど、

この時ばかりは全員が本気の表情をしていた。

真剣にLafayetteを売り込んでいる皆の様子は濃く残ってる。

やっぱ真剣な時は人間光ってます。

実はここでJunは後のPRIVILEGE香港店のパートナーに出会う。

この時は誰もそんな風になるなんて思っていなかったけど。

点と点は繋がるらしい。

 

無事1日目を終えた一行は、

出店者やVIP専用のプライベートパーティーに向かった。

ゲストは確かTravis Scott。

滞在しているホテルでタクシーを呼ぼうとしていた時、

Junが急に粋なことを言った。

 

「リムジン借りちゃうw?せっかくのベガスだしハイプに行ってみるw?」

 

全員満場一致でリムジンのハイヤーを呼んだ。

普段全くハイプな事はしないJunだが、

彼は金を使うタイミングが粋だった。

今までも自分のモノや車よりも人と情熱にベットしていた。

ベットされた方はそれを中々忘れない。

この人の為ならって気持ちが芽生えて何か手伝いたくなる。

粋な金の使い方。

これもJunから学んだことの一つだ。

パーティー会場は今まで行った中で最高のハイプだった。

ギラギラブリブリのセレブ揃い。

浮きまくってる自分が笑えてくるぐらい。

Travisのショーも半端なかった。

演出の規模もステージの作りも日本とはレベル違い。

マーケットの大きさの違いを生々しく感じた。

“楽しい”以外の感覚がない空間。

クルー全員がぶっ壊れ始めた。

普段全く酒を飲まないTeddyもベロベロ。

自分含めて全員がほぼ酩酊状態になる程飲んだ。

この時が初めて皆でこんなにぶっ壊れた時かもしれない。

少し全員の距離が縮まった感じがした。

 

そして2日目。

ロビーに集合する全員顔が死んでいる。

昨日やりすぎたせいだ。

Adrealが首を横に振りながらエレベーターから歩いてきた。

 

「だめだ。Teddyが起きない。気持ち悪いから今日は休むそうだ。」

 

嘘だろ。

 

またTeddyが舐めたことを言い始めた。

もうなんか段々笑えてきて、

特に無理矢理起こすこともなく、

Teddyをホテルに残し残りのメンバーで会場へ向かった。

 

 

 

2日目、3日目も無事にショーは終わり、

最後の晩皆で祝杯をあげた。

Adrealがスプーンでコップを叩く。

 

カンカンカンカン!

 

「皆聴いてくれ。今回のトレードショーは最高だった。まずはJun、そして皆に感謝したい。これから今回の機会が生きることを祈ってる。だけど次、次に俺達がやることはなんだ?…次はクソニューヨークでの出店だ。チアーズ!」

 

「チアーズ!!!!」

 

この3日間を見ていて一番大きく変わったのは、

ニューヨーク組の意識だったと思う。

一瞬の高ぶりなのかもしれないが、

トレードショーの反響や初日の皆でぶっ壊れたこと含め、

TeddyもAdrealもMannyもニューヨークでの出店に、

本気になっていた瞬間だったと思う。

 

蕾が咲いた頃。

この約一年後、Junはニューヨークに店を出す。

 

 

 

 

2017年、1月某日。

 

年が明けてまだ間もない頃にJunから電話が来た。

 

「明けましておめでとうございます。実はついに店出します。4月オープン予定何だけどKIKIさん来られますか?できればお店作るところから撮ってもらいたいんで1ヶ月前乗りでニューヨーク入って欲しんですけど。」

 

「おめでとうございます!絶対行きます!予定空けるので日程決まったらまた教えてください。マジおめでとうございます!」

 

4年前からここまで、点と点がまた繋がった。

 

オープン予定は4月22日。

JunとBONEさんと私の3人は1ヶ月前の3月後半、

ニューヨークに向かった。

時間差で大工の太郎さんも入国。

新店舗の場所はダウンタウンのローワーイーストサイド。

aNYthingでPOPUPをやった頃は微妙だと感じていた地域だった。

ただニューヨークの街の流れは早くて、

Junが出店を決めた頃ローワーイーストサイドは、

ダウンタウンの中でもホットスポットになってきていた。

 

オープンまでの共同生活が始まった。

太郎さんは遅れて従業員がくる兼ね合いもあって、

一人別の場所に滞在していたが、

それ以外のJunとBONEさんと私はブルックリンのアパートに住むことになった。

今でも忘れないのが、週末4人でクラブに行き泥酔して帰った翌朝。

リビングでコーヒーを飲んでいた私にBONEさんが話しかけてきた。

 

「KIKIさんおはよーー。ネコ昨日やり過ぎて死んでるんだろw」

 

「そうですね。多分死んでると思いますw」

 

「KIKIさん水ある?」

 

「ありますよ。」

 

冷蔵庫からペットボトルの水をとりBONEさんに渡した。

BONEさんはピルケースから錠剤を取り出して砕き始めた。

 

「えw?それなんですかw?」

 

「バイアグラwネコ二日酔いだからベッドの隣に水置いてたら一気飲みしそうだろw」

 

BONEさんはバイアグラを二錠粉々に砕き、

粉末状にして水に混ぜペットボトルを振る。

それをバレないように枕元においた。

起きてきたJun。

ペッドボトルを片手に持っている。

フラフラになりながらリビングの椅子に座り、

案の定水をゴクゴク飲み始めた。

この後は想像に任せます。

 

BONEさんのイタズラはかなりのセンスだった。

でもやり過ぎてとうとうJunにホテルに移動させられた。

多分住み始めて1週間ぐらいだったと思うw

 

入国翌日から大工の太郎さんの施工が始まった。

海外で材料や道具を準備するのが大変らしく、

かなり苦労していたのを覚えている。

太郎さんが施工している日中、

JunとBONEさんとTeddyと私は、

内装に使う家具や機材を探しに街にでていた。

細かい部分を含めると結構揃えるものが多くて、

結局オープンのギリギリまで施工と買い出しは続いた。

アパートに帰ってきてからもJunは毎日日本とのやり取りをする。

丁度半日違う時差が絶妙に休ませてくれないループを生んでいた。

 

そして向かえたプレオープンパーティー当日。

大勢日本人達がお祝いに駆けつけてくれた。

Lafayetteのスタッフも入れたら2、30人以上いたんじゃないだろうか。

現地の人間もたくさん来てプレオープンパーティーは大成功。

店は熱気で溢れてフルパンのパーティーは大盛況だった。

 

頭の中でシャンパンの栓が抜ける。

 

1ヶ月前に前乗りして1からできていく店を見てきたのもあったけど、

正確には4年間見てきて本当にオープンした。

 

そんな気持ちだった。

 

有言実行。

 

今でも一番尊敬しています。

 

 

 

 

 

 

オープン当日の朝。

大成功のプレオープンの夜は大人しく帰り当日を向かえた。

デリでコーヒーとサンドウィッチを買い、

アパートの前でJunとタバコを吸った。

 

「ついにオープンですねw」

 

「何だかんだついにきましたねwここからが勝負だけどw全然売れなかったらヤバいよw」

 

「大丈夫ですよwわかんないですけどw」

 

「まあなるようになるねw」

 

 

 

 

 

 

路上でタバコを吸いながら世間話をするこの光景。

 

 

どこかで見たことがある。

 

 

4年前の初めてルックを撮影したニューヨーク。

 

 

 

進んでいれば点と点は繋がる。

 

 

 

御社のCEO、最高にかっこいいです。

 

 

 

24K GOLD!

 

 

-完-

 

 

半年間読んでくれた皆さんありがとうございました。

また旅に出ようと思えました。

 

KIKI

 

 

TAGS:

» BLOG HOME

GO TO TOP